ブログ -診察室より-

「朝の光の中で」 その52018.12.09

しかしながら、わたくしはテラス食堂で朝の光りによる、ガラスのコップの美しさを見つけたのです。

確かに見たのです。

この美しさに、はじめて出合ったのです。

これまでにどこでも見たことがないと思ったのです。

このやうな解逅こそが、文学ではないのでせうか、また人生ではないのでせうか、と言えば、飛躍に過ぎ誇張に過ぎませうか。

さうかもしれませんが、さうでもないでせう。

今まで七十年の人生で、ガラスのコップのこのやうな光りを、ここではじめて、わたくしは発見し、感得したのです。

「朝の光の中で」 その42018.11.30

朝の日の光にガラスのコップが美しく映えるのは、ハワイの海辺に限ったことではないでせうと思はれます。

南フランスの海辺でも、南イタリィの海辺でも、あるひは日本の南方の海辺でも、カハラ・ヒルトン・ホテルのテラス食堂でのやうに、コップのガラスの肌に、明るく豊かな日の光りがうつるのかもしれません。

またホノルルの日のかがやき、空の光り、海の色、木々のみどりを、ガラスのコップのやうなつまらないもの、なんでもないものに、鮮明な象徴を見つけなくても、ハワイの美しさを象徴するいちじるしいもの、よそにたぐひのないものは、もちろん、幾らもありますでせう。

色のあざやかな花々、姿よく茂る木々、それから例へば、わたくしはまだ見る幸ひに恵まれてゐないものですが、沖のひとところだけに降る雨に真直ぐに立つ虹、月の暈(かさ)のやうに月を巻く円い虹など、めづらしい景物もありませう。

「朝の光の中で」 その32018.11.28

ガラスのコップの縁の、このきらめきに目を澄ましてゐるうちに、コップの胴のひとところにも朝日の光りの宿るのが、私の目にうつって来ました。

これはコップの底の縁のやうに強いかがやきではなくて、ほのかにやはらかな光りであります。

光線の燦々なハワイでは、日本風にいふ「ほのか」はあてはまらないかもしれませんが、底の緑の光りが点からかがやきを放ってゐるのとはちがって、胴の光りはやはらかく面に、ガラスの肌に、ひろがってゐるのです。

この二つの光りは二つとも、いかにも清らかに美しいのでした。

ハワイの豊かに明るい太陽、爽かに澄む大気のせゐでありませう。

片隅のテエブルの上に用意した、ガラスのコップの群れに、このやうな朝日の光りを発見し、感得しましたあとで、目を休めるやうにテラス食堂をながめますと、すでに客のテエブルにおかれて、水と氷を入れてあるコップ、そのガラスの肌にも、ガラスのなかの水と氷にも、朝の光りがうつったり、さしこんだりして、さまざまに微妙な明りをゆらめかしてゐました。

気をつけなければ気がつかないほどの、この光りもやはり清らかに美しいのでした。

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