ブログ -診察室より-

乳がん検診 考 ―乳がん検診における利益と不利益―2016.09.12

今日は、最近よく聞く乳がん検診における利益と不利益について書いてみたいと思います。

乳がん検診の利益とは「検診によって乳がんの死亡率が下がる」ことです。言い換えれば、放っておいたら命を落としたであろう乳がんを、命に影響を与えない段階で見つけた場合「利益」とされます。

では、不利益とは、、、

前回の項でも書きましたが、マンモグラフィも超音波検査も「影」を見ています。この「しこりの影」、パッと見て明らかな良性、明らかな悪性もありますが、オーバーラップしている部分が実は結構多いのです。がんのように見えて良性だったり、良性のようだががんだった、というケースがあります。この為、「要精査」というふるいにかけて絞り込みを行います。

これをわかりやすい数字で説明します。

1000人の方が乳がん検診を受け100人の方が「要精査」とされます。そして精密検査の結果3人の方にがんが見つかりました。あとの97人の方はがんではありませんでした。3人のがんを見つけるために97人のがんではない人を含めてふるいにかける必要があるのです。

これ、一般的にはまずまず良いとされる乳がん検診の数字です(実際には100人の数字はもう少し低い方が良いのですが、、)。

一方で、例えば1000人が受け150人が要精査となり、4人の方にがんが見つかった検診があるとします。

考え方によっては、より多くの方にがんが見つかったんだからこの検診の方がいいのではないか、と思うかも知れません。でもこの場合、その為にがんではなかった146人の方が本来なら必要でなかった精密検査を受けることになってしまいます。この部分が乳がん検診の不利益です。

一般的には150人の方が要精査となる乳がん検診はよろしくないと考えられます。不利益が大きすぎるのです。これがあまりに大きいと利益よりも不利益の方が大きくなり、推奨できない、となります。

ただいずれにしても、3人の方のがんを見つけるために100人の方が要精査になる、というのが乳がん検診なのです。この数字のバランスに驚かれる方も多いのではないでしょうか。

あと、代表的な不利益として、放置しても命にかかわらなかったであろう乳がんが見つかり、治療することになった不利益、というのがあげられます。ただ、この見極めについてはまだ学会でも論争中で結論は出ていません。

その他には、これら一連の流れに伴う精神的な苦痛、という不利益も挙げられます。