ブログ -診察室より-

福島大野病院事件2008.09.04

表題の事件をお覚えでしょうか?癒着胎盤の帝王切開に伴う出血死により産科医が逮捕された事件です.2週間前,地裁の判決が出てマスコミでも大きく取り上げられました.今日の0時をもってその控訴期限となり,地検は控訴を断念,無罪が確定しました.素直によかったと思います.

もちろん亡くなられた患者さん,ご家族にあっては大変お気の毒に思います.自分自身も産科医として母体死亡だけはあってはいけないといつも肝に銘じています.しかし大変厳しい状況なり,いまの産科学をもってしても救えない命がある状況がある事も事実です.


今回の件について患者さんを救えたかどうかは産科医にとってとても大切な話しで,当事者にあっては真摯にその議論を受け止めなければなりません.ただし,その議論の結果が刑事罰である事にほとんどの医師が強い拒否反応を示しました.
これは医師のみが刑事罰を逃れようとしている訳ではありません.いくつかある治療法の中から一つの選択をしなければならない.そして結果として最善と思われる選択をしても結果が伴わない事もある.これがよく言われる医療の不確実性です.あとで振り返ってこちらの治療法の方がよかった,もしくは診断自体が間違っていた,と言う事は簡単です.後医は名医と言われる所以です.
こうした不確実な一面があるにも関わらず,結果が伴わない場合刑事罰を加えるとなると,難しい治療なり判断を下す事を医師が避け,いわゆる萎縮医療を招きます.これは既に起きており,現在進んでいる医療崩壊の大きな原因になっています.

これらの解決策として航空事故調査委員会になぞらえた医療事故調査委員会といった第三者機関の設置が検討されています.医師は自分達の身を守る為に医療をしているのではありません.患者さん達の命を守る為に医療をしているのです.その医師が理不尽なペナルティを受ける事なく,なんとか医療の崩壊を食い止め,医療の質の向上に資するような機関が出来る事を望んでいます.